PICK UP ACTRESS 松本穂香
PHOTO=mika INTERVIEW=斉藤貴志
「ひよっこ」のメガネの澄子役で注目
オムニバスホラー「狂い華」で主演も
――朝ドラ「ひよっこ」で演じた澄子はおかっぱでメガネでしたが、普段はメガネは使っているんですか?
「視力はかなり悪いのでコンタクトをしています。澄子のメガネは衣裳合わせのときに選んで、『本当に目が悪いんだから』ということで、眼科で度を合わせて実際に使えるものを作っていただきました」。
――今も使っていたり?
「いただいて使っています。ケースに“澄子”という大きなシールが貼ってあって、『これは剥がすね』と言われたんですけど、『あっ、そのままで!』と言って、いただきました」。
――「あの髪型にして、あのメガネをかけたら、自然に澄子になれた」と発言されてましたね。
「鏡を見たら自分と全然違っていたので、意識しなくても『こういう子なんだな』となりました。撮影では1日中メガネを掛けていて、帰って外してからも、こうやっちゃって(縁のところを上げる仕草)、『掛けてないや』みたいなことがありました(笑)」。
――「ひょっこ」のクランクアップ後も連ドラのゲスト出演などが続いて、相変わらずの忙しさですか?
「ワタワタしすぎていることはないです。『ひよっこ』の乙女寮のシーンは夜遅くまで撮って、高校生がいたのでそこまで遅くはなりませんでしたけど、次の日に朝早くから……という毎日だったので、そのときに比べたら全然」。
――ちゃんと寝られてますか?
「はい。健康的に」。
――澄子は寝てばかりいるキャラクターでしたけど。
「私は朝は早く目が覚めるほうだと思います。澄子みたいにほっといたらずっと寝てることはないですね(笑)。7時間寝られたら大丈夫です」。
――「ひょっこ」で寝るお芝居はうまくなったのでは?
「そうですね。ずっと寝てるシーンもあって、普通に寝ていても面白くないと思って口を開けて寝ていたら、結構長かったので本当に寝ちゃって、口が閉じてました(笑)」。
――穂香さんは大阪から上京して2年ですよね? 福島の田舎から集団就職してきた澄子とは違ったでしょうけど、ドラマチックなことはありました?
「出てくる日に、友だちがサプライズで見送りにきてくれました。事前に仲良い子と2人でごはんを食べて、その子が来てくれるのは聞いていたんですけど、演劇部の子たちが10人くらい来て『行ってらっしゃい』と言ってくれて、ホロッとしました」。
――東京での生活に戸惑いはありませんでした?
「あまりなかったです。大阪でも梅田や難波に行けば何でも揃ってましたし、それまでも東京には来ていたので。友だちに会えないのが寂しかったくらいですね。あと、ティッシュ配りの人が怖いのは衝撃的でした(笑)。大阪のほうが変わった人は多いですけど、そんなグイグイくるティッシュ配りの人はいなかったので、渋谷で初めて出くわして『気をつけよう』と思いました(笑)」。
――部屋がつい乱れたりはしませんか?
「気がついたらゴチャッとしているようなときはあっても、そんなに汚くなることはないです」。
――ちゃんとしているんですね。さて、オムニバス映画「狂い華」の一篇「ワルツ」に主演ということですが、ホラーは自分でも観ます?
「あまり観ないんですけど、好きは好きです。怖いんだけど観ちゃう、みたいな……」。
――顔を手で覆って、指の間から観るような?
「そんな感じです。家では隅のほうでクッションを抱きしめて観たり(笑)。でも、1人では観られないかもしれません。夜とか、ちょっと引きずっちゃうので(笑)」。
――普通に怖がりだったり?
「だと思います。大阪から東京に仕事で来ていたとき、夜遅くなると事務所に泊まっていたんですけど、もう怖くて怖くて。何もなくても“出る”と思っちゃうと、いるものだと警戒しながら寝ます(笑)」。
――「ワルツ」の撮影は今年の年明けすぐだったそうで。
「明けて少し経ってから、山の中に行って撮って、とても寒かったです。とりあえずカイロを衣裳の下に貼りまくってました。夜になると真っ暗で怖くて、ホラーを撮っていることもあって、そういう意味での寒気もありました(笑)」。
――あの廃屋も不気味な感じはしました?
「不気味でした。『なんでここにこんなものがあるんだろう?』とか、山の中で妙に生活感があるのが怖かったです。あそこは出ると思います(笑)」。
――呪いを題材にしたモキュメンタリー(架空のドキュメンタリー)映画の撮影隊の話で、穂香さんが演じる陽子はメイキング担当のスタッフ。彼女の回したカメラが監督や役者たちを撮っている設定で、カメラを回す穂香さん自身はあまり姿が映ってないんですよね。
「そうなんです。しかもメイキングの人って質問はしても、そんなにしゃべらないじゃないですか。『どれぐらい映るんだろう?』と思っていました」。
――実際に穂香さん自身がカメラを回していたんですか?
「はい。私が撮った映像も結構使われていると思います。自分で撮りながら演じるのは初めての経験で、難しかったです。最後のスマホでの映像も全部自分で撮っていて、きれいに映さなきゃいけないし、お芝居もしなきゃいけない。やることが二つあったので大変でした」。
――ホラーという部分でも、いつもと違う難しさはありました?
「はい。陽子が『撮らなきゃ』みたいな一心で、何かの力によってだんだんおかしくなっていくのは、どこからおかしくなるのか、最初悩んだりはしました」。
――最初は嫌々な感じで撮っていた陽子が、不気味なことが起こるなかで、逆に「これは映画です」と撮影続行に固執してましたが、あれも普通の心境の変化というより……。
「もう何だかおかしくなっちゃった、ということです」。
――最後にはイッちゃったような笑い声も。
「あれは完全におかしくなっちゃったところですね。自分でスマホを持って撮りながら、声も同時に録って、笑い方を毎回変えて3~4回やったと思います。怖い感じになっていたら、いいんですけど……」。
――冒頭の自分が撮られるのを嫌がったり、監督を胡散臭がってるところは、本当に素人さんをドキュメンタリーで撮っているようなリアルさがありました。
「あの辺は監督役のアベラ(ヒデノブ)さんがグイグイ来てくださったので、『なんだ、この人?』という感じになって(笑)、やりやすさがありました」。
お芝居に対する考え方は
変わり続けると思います
――それからドラマの「コウノドリ」の序盤に出演ということで。
「鴻鳥先生の回想シーンで出させていただきました。出産したお母さん役は初めてで、生後8日の赤ちゃんを抱っこするシーンがありまして、『命ってすごいな』と思いました」。
――というと?
「手とかすごく小さいのに、しっかり爪が生えていたり、本当のお母さんもいらっしゃっていて、8日前に出産したばかりなのに、元気にされていたり……。私は赤ちゃんを抱っこするのが怖かったんですけど、お母さんは片手で抱いて連れてきていたので、『お母さんもすごいな』と思いました」。
――産後の心身のこととか、経験がないなかで、いろいろ調べたりもしたんですか?
「想像力ですね。近い経験もないので、何が正解かはわからないんですけど」。
――もともと「あまちゃん」を観て、女優を「楽しそうだな」と志したそうですが、今までやってきて、想像通りの楽しさはありました?
「想像もしてなかった悩みもありますけど、やっぱり楽しいときはすごく楽しいです。きっと“お芝居”って感覚でなくなるときが楽しいんですよね」。
――でも、悩むときは悩むと。
「もう、いっぱい悩んでます。このお仕事をしているうえで……ということが常にいろいろと。でも澄子じゃないけど、おいしいものを食べたら『まあ、いっか』となります(笑)」。
――あと、「お~いお茶 ほうじ茶」のCMは自分でも目にしました?
「テレビでは観られてないんです。ネットで観ました」。
――「お~いお茶」というキメ台詞も言ってます。
「ずっと観てきたCMのシリーズで、自分があれを言う日が来るとは思いもしませんでした。いろいろなパターンで声を録って、『お~い』と伸ばす尺の秒数とか繊細でした」。
――コンマ何秒の違いなんでしょうけど。流れるのは15秒でも、撮影は半日くらいかかったり?
「そうですね。CMを観てる分には何も考えないところで『こんなに時間をかけるんだ』とか、ビックリしました。飲んでるときもペットボトルの“ほうじ茶”と書いてある面が見えないといけなかったり……。そんなことを気にしてCMを観たことはなかったんですけど、たぶん観ているなかで自然と頭に入ってくるように、いろいろ計算されているんだと思います」。
――共演しているニッチェの江上敬子さんが「癒されるんだよね」という台詞もありました。
「私も朝起きて温かいお茶を飲むとホッとするというか、体がリラックスしますね。日本人ですから」。
――他にも穂香さんにとって、癒しになるものはありますか?
「犬を飼っていて、帰ってくると『おかえり~』って全力で迎えてくれるので、すごく癒されます」。
――どんなワンちゃんなんですか?
「マルチーズとトイプードルのミックスのマルプーという犬種のオスで、小さくて、コロンといいます。何となく名付けました」。
――休みの日はずーっと遊んでたり?
「そうですね。適当に遊んでも乗ってくれるので、ワシャワシャしたり、ボールを投げたり、散歩に行ったり……。飼うのが大変なときがあっても、かわいさのほうが上回ります」。
――ちょっと先ですが、クリスマスとかは盛り上がる感じですか?
「イベントはちゃんと祝いたいなと思います。ハロウィンはまだ馴染みがあまりないですけど、クリスマスやお正月は家族と過ごしたい派です」。
――今までのクリスマスの思い出はあります?
「幼稚園の頃にお父さんがカーテンのほうを指さして『今、赤いのが見えた』というのを信じてました。『えーっ!?』ってすごく興奮して、すぐ外に見に行って『見たかった!』と大騒ぎしてたんですけど、ちょっと大きくなったら『あれはウソだったんだ』とわかりました。『サンタさんからの手紙はお母さんの字だったな』とか(笑)」。
――今年のクリスマスはどう過ごしたいと?
「普通に家でケーキを食べたいです。そのときに会える友だちがいたら、一緒に何かできたらいいなと思います」。
――撮影もまたいろいろ入るそうですけど、穂香さんは今、ブレイク間近と言われて仕事が増えていて、本人的にも「私、売れちゃいそう」みたいな感覚はあるものですか?
「全然ないです。まだまだ、まだまだ。『目の前のことを頑張ろう』という気持ちだけです。おばあちゃんや家族から『良かったね』と言われることが増えてきたのは幸せだと思いますけど、実際そんなに変わったこともありませんから。気を抜くとサボってしまうので、ボイトレで滑舌が良くないのを直すところから地道にやっています」。
――演技に対する考え方が変わってきたところはあります?
「お芝居に対して考えすぎちゃうところがあるので、あまり考えないようにしています。それでも考えちゃうんですけど……。正解はないので『ああなのかな? こうなのかな?』って、ずっとグルグルしている感じです。自分に向いてると思うことも常に変わっていて、たぶん変わり続けていく気がします」。
松本穂香(まつもと・ほのか)
生年月日:1997年2月5日(20歳)
出身地:大阪府
血液型:不明
【CHECK IT】
2015年1月にWEBムービー「LOTTE SWEET FILMS『MY NAME』」で女優デビュー。これまでの主な出演作はドラマ「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(関西テレビ・フジテレビ系)、「黒い十人の女」(読売テレビ・日本テレビ系)、映画映画「青空エール」、「にがくてあまい」など。2017年4月スタートの連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)で青天目澄子を演じて注目される。10月14日(土)公開のオムニバス映画「狂い華」内の「ワルツ」で主演。出演した映画「MATSUMOTO TRIBE」が10月14日(土)~20日(金)まで新宿武蔵野館レイトショーで再上映。ドラマ「コウノドリ」(TBS系)に出演。伊藤園「お~いお茶 ほうじ茶」CMがオンエア中。2018年夏公開予定の映画「世界でいちばん長い写真」に出演。
詳しい情報は公式HP
公式ツイッター
公式インスタグラム「週刊 松本穂香」