PICK UP ACTRESS 小島梨里杏
PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志
旅ロケで素を出した1st写真集を発売
初主演の舞台で男性との距離感に悩む役
――髪を短くしてから、生活に変化はありましたか?
「お風呂は楽になりました。ドライヤーが早く終わります。長かったときは乾かすのを途中で諦めて(笑)、そのまま三つ編みにしてウェーブを作ってました」。
――1st写真集「半透明」に髪を切る写真もありますが、なぜ今ショートにしようと?
「以前もずっと長かった髪を、お仕事の関係で切ったことがあったんですね。そのときに気持ちも軽やかになったんです。私はもともと端っこにいたい性格で、ロングだった頃は何か言いたくても言えないことが多かったのが、髪を切ったら少し快活になりました」。
――形から入って、そうなることはあるようですね。
「そのときの自分の変化は保ちながら、髪はまたロングになって、年を重ねて節目の25歳になりました。ここで写真集を出せるのなら、長い状態も短い状態も収めておきたいと思ったんです。『さらに前向きになれるように』という想いも込めて切りました」。
――梨里杏さんの写真集はこれが初めてとは、意外でした。
「実は出してなかったんです(笑)」。
――プロデュースにも携わったそうですが、全体的にどんな1冊にしたいと?
「ありのままの小島梨里杏が詰まっている写真集にしたいと思いました。今までのお仕事だと、自分を押し出すというより、役柄に寄り添ったり、番組での自分の役割を考えることが多かったんです。プライベートで写真を撮ってもらったときまで、カメラマンさんに『もっと普通でいて』と言われて、私は普通のつもりだったから『アレ?』と思って……」。
――無意識に身構えていたんですか?
「表現に関しては軸みたいなものをいただくことが多かったので、『ハイ、小島梨里杏をどうぞ』ということはなかったわけです(笑)。だから、『“普通”や“ありのまま”って何だろう?』と考えました。お仕事ではテンションを上げるし、演技で泣いたり怒ったりもする。だからこそ、フラットな自分をちゃんと確立した上で、お芝居やMCをやりたいと思ったんです。そうすると、今回の写真集に収めたいものが決まっていきました」。
――南の島で水着になって……といったものにはならなかったわけですね。
「そうですね。普通でいると言えば旅だろうなと思ったので、私が旅をしている姿を撮ってもらいました。この写真集を見て、一緒に旅をしている気持ちになってほしいです。どちらかというと皆さんのほうから寄り添っていただく表現は、初めて経験しました」。
――動物園での写真もありましたが、普通に好きな場所なんですか?
「好きです! 普段そんなによく動物園に行くわけではないですけど、甥っ子と一緒に行ったりするので、すごく久しぶりではなかったです」。
――梨里杏さんがカバと一緒に寝ている写真が印象的でした。
「カバが大好きというわけではないですけど(笑)、ああいうふうにカバが並んで昼寝していることは、なかなかないらしいんです。私は悪ふざけが好きなので一緒に寝ようと思って、柵のところに頭を乗せて目を閉じたところを、撮ってもらいました」。
――表紙がバスタオル1枚のカットですが、温泉も好きなんですか?
「好きですけど、なかなか行く時間はないです。でも、やっぱり旅に温泉は必須じゃないですか(笑)。なので、温泉に行って撮ることになりました」。
――満足度の高い写真集になりました?
「はい。同性の反応が気になって親友に見せたら、ニヤニヤしながら見て『いいね』と言ってくれました。『この顔はよくやるよね』とも言われたので、狙い通り、私の素の瞬間が切り取られた作品になったんだと思いました」。
音遊びが入った転換が多い舞台なので
切り替えが大変だけど楽しいです
――3月27日からは、初主演舞台「ひびのばら」が上演されます。
「岐阜のアパートでひとり暮らしを始める女の子のお話です」。
――「キ上の空論」の公演ですが、稽古から独特なものはありますか?
「テンポが良くて音遊びや言葉遊びが入って、カーンという音がきっかけで時間が飛んで、急に違うシーンに変わったりします。感情と関係なく、泣いてたと思ったら次のシーンでは『あのね』と普通に喋るとか、場面がコロコロ転換するので、気持ちの切り替えとかで大変な部分もあります。でも、私はもともとキ上の空論さんの舞台に出たかったので、念願が叶って感激でした。そういうテンポ感の面白さは知っていたから、自分が入ると、大変さより、『来た来たこの感じ!』という楽しさのほうが勝ちますね」。
――演じる寿はどんなキャラクターですか?
「父親がいなくて母親に育てられて、男の人のことがよくわからない女の子です。それなりにつき合ったことはあるけど、いまだに『男とは何だ?』と考えています。お母さんがとにかく男運がなくて、口うるさく『男はこうだから』と言われている。でも、自分の目と心で知りたい。だから、大きなテーマは『愛とは何だ?』という感じです」。
――おーっ! 深いんですね。
「わかりやすい王道のストーリーではなくて、微妙なすれ違いがあったり、『その愛は別の人にとっては愛ではない』とか、好きすぎておかしくなっちゃうとか、『人生そんな簡単には行かない』という物語になっています。そんな中で、寿は男性とのコミュニケーションがうまく取れません。女性とは普通に接するんですけど」。
――演じるのが難しい面もありますか?
「ありますね。稽古していて戸惑うことがあります。寿は家族に対して冷たいんですよね。『ハイハイハイ』『えっ、何?』みたいな感じで、結構怖いんです。うちの家族は仲が良くて、私はお母さんやお姉ちゃんにそういう態度を取ったことがないから、演出家さんに『冷たすぎないですか?』と聞きました。そしたら『そんなことないよ。お互い好き勝手言っているのが、仲良く見えるよ』と言われて、『なるほど。そうだな』と思いました。自分の中にはまったくなかった家族の関係性でした」。
――自分がひとり暮らしを始めた頃を思い出したりは?
「寿が住んでいるのはボロアパートだったり、自分のときとは状況が全然違うので、あまり思い出しませんね」。
――梨里杏さんは、寿みたいに総菜屋でアルバイトをしたこともないでしょうし。
「でも、カフェでバイトしたことはあります。こじんまりとしたお店で、ケーキを作るのをちょっと手伝ったり、ドリンクの注文を取ったり……。基本的に小さなフロアのことは全部やってました」。
――この舞台では“薔薇色の日々になるまで”が描かれるそうですが、薔薇色の日々って、どんな日々が思い浮かびます?
「私は単純にマンガを思い出してしまいます。『ベルサイユのばら』みたいな目がキラキラした人のイメージなので(笑)、あまりリアルさを感じない言葉ですね」。
――舞台が終わったら、4月からはまた心機一転な感じですか?
「『天才てれびくんYOU』が2019年度も続くことになりました。3年目に入るので、進化したいです。アットホームな現場で、団長と私は子どもたちと年は離れてますけど、あまりお兄さん、お姉さんというキャラではないらしく(笑)、一緒に楽しく遊んでます。その反面、ドラマパートではこの2年間、『もっとこうしたほうがいいな』と思うことがあっても、それこそ番組に寄り添いたいと考え過ぎて、ずっと自分の意見を抑えていたんです。『私が言ってもな……』って、謎の遠慮をしていました(笑)」。
――そこを新年度は変えていこうと?
「今までもドラマの現場では『この役はこうなので』とか言えましたし、『天てれ』でも自分のことについては言ってました。子どもたちに関することはディレクターさんたちにお任せでしたけど、ドラマが本職の方たちではないので、子どもたちが『何のこと?』ってなるときもあるんです。そういうところも含めて、自分が番組に深く関わっていきたいと思うようになりました」。
――なるほど。梨里杏さんは女優が本職ですからね。
「演技指導なんて言いませんけど、子どもたちと作品を一緒に作っていくことができたら……。それはプロデューサーさんや団長ともお話しています。今までは遠くから見守っていたのを、『こういう反応が来たら、みんなどうする?』みたいなことを言ったりして、去年まで全然質問とかしなかった子が『小島さん、ここがわからない』と聞いてくれるようにもなりました。『たとえば、こうすれば?』とかヒントをあげると、『ああ、そっか』みたいになります。そこで演技を面白いと感じてくれたらいいですね。そんな『天てれ』の改革をしたいと思ってます」。
――ちなみに、お花見とかはするんですか?
「めちゃくちゃしたいです。舞台が終わったらすぐに行きます」。
――毎年恒例なんですか?
「そうですね。と言っても、私はお酒はあまり飲まないので、家族と近くの公園に行ってピクニックみたいなことをして帰るとか、桜の咲いた川沿いを歩くとか、地味な感じのお花見です(笑)」。
小島梨里杏(こじま・りりあ)
生年月日:1993年12月18日(25歳)
出身地:東京都
【CHECK IT】
2014年に「烈車戦隊トッキュウジャー」(テレビ朝日系)に出演して注目される。主な出演作はドラマ「表参道高校合唱部!」(TBS系)、「朝が来る」(東海テレビ・フジテレビ系)、「子連れ信兵衛2」(NHK BSプレミアム)、「3人のパパ」(TBS系)、映画「オオカミ少女と黒王子」、「人狼ゲーム プリズン・ブレイク」、「暗黒女子」ほか。「天才てれびくんYOU」(NHK Eテレ/月~木曜18:20~)に出演中。通信カラオケ配信番組「DAM CHANNEL」でMCを担当。1st写真集「半透明」(玄光社)が発売中。初主演舞台「ひびのばら」は東京芸術劇場シアターウエストにて3月27日(水)~3月31日(日)に上演。6月公開予定の映画「ある町の高い煙突」にヒロイン役で出演。
詳しい情報は公式HPへ