PICK UP ACTRESS 古川琴音

PICK UP ACTRESS 古川琴音

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

デビュー2年で多くの作品で印象を残す
映画「街の上で」に古本屋の店員役で出演

 
 

――古川さんはデビュー2年で、すでに多くの作品に出演されてきました。テレビでJTのCMとかが流れて自分の姿を見るのも、もう慣れました?

「まだちょっとギクッとします。自分の姿が映るとビックリして、チャンネルを替えたりは今もしています(笑)」。

――とりあえず2年でここまで来られたのは、自分でも想像以上でしたか? あるいは自信がありました?

「自信も何もなくて、役者って具体的にどういうことをするのか、どんな環境でお芝居するのかもわからなかったので、『とにかくやってみよう』という気持ちだけでした。いろいろな作品に出ることができて、いろいろな役を演じられて、今は充実しています」。


――演技に関して、培ってきたものはあったんですよね?

「中学、高校と演劇部で、大学でも英語劇のサークルに入っていました。卒業したら仕事は何をしようか考えたとき、習いごとを含めて続けてきたものは演劇しかなくて。それで就活をする前に、一度この世界にチャレンジしようと思ったのがきっかけで、役者を始めました」。

――オーディションとかで推していることはありますか?

「何もないです。台本に忠実に誠実に、役になるべく近づきたい……ということだけを常に考えています」。

――今までの出演作で「こういう評価を受けて嬉しかった」ということはありました?

「作品ごとに出せるものはすべて出して、一生懸命やってますけど、出来上がって自分で観ると反省する点も多いので、何かを『良かったよ』とか誉めていただいても、正直まだ素直に受け入れられていない状態です」。

――これだけ映画やドラマに声が掛かる中で、自分なりに強みだと思うこともないですか?

「『声が良いね』と言ってもらえることはあります。台詞を言う以上、声は大事だと思うので、自分の声を気に入ってもらえたり、キャラクターに合うと感じてくださることが多いのは、強みなのかなという気もします」。

――声もですけど、古川さんはルックスや雰囲気も印象に残ります。

「そうみたいですね。一回見たら覚えてもらいやすいかもしれません(笑)」。

――髪は昔からショートなんですか?

「お仕事を始めてからはずっとボブですけど、大学の頃はロングで、胸の下くらいまであったりしました。自分のサイクル的に、すごく伸ばして一気に切るのが好きだったので、またいつか伸ばして切りたいです」。

――映画は自分でもよく観ますか?

「役者を始めてから、観る量は格段に増えました。最近はサイレント映画がいいなと思って、よく観ています」。


――かなり昔の作品ということですよね。どうしてそこに?

「少し前に、自分で映画を撮ってみたいと、一瞬だけマイブームで思ったことがあって、お話も浮かんだんです。映像はリアルに感じられるものにしたくて、そこにコマを省いたカクカクした動きや、フィルムのスレていく感じがあると、ファンタジーっぽさが生まれていいような気がしました。それで思い立って、昔のサイレント映画を観てみたんです。あとは、大学の授業で『月世界旅行』というサイレント映画を観たら、本当に映画が生まれたばかりの時代に撮られたものなのに、クオリティが高くて。ワクワクして夢があって、いいなと思いました」。

――言葉がない分、イメージをかき立てられるとか?

「それもありますし、衣装も舞台装置も音楽もすべて、みんなが映像を作れることに喜びを感じて、楽しんでいるのが伝わってきました」。

――古川さんが出演した「街の上で」の今泉力哉監督の作品は、観たことはありました?

「『愛がなんだ』はお話をいただく前に観ていて、出演が決まってからは他の作品も一気に借りて、ほぼ全部観ました」。

――作風にどんな印象を持ちましたか?

「『どこまで台本なんだろう?』と思うシーンが毎回ありますね。すごく静かで長く感じるところもありますけど、それは役者から自然に出てきた間で、面白いと思いました」。

――「街の上で」で古川さんは、主人公の荒川青(若葉竜也)の行きつけの古本屋の店員・田辺冬子を演じました。現場では今泉組ならではのものはありました?

「今までは演じるときに、台詞にちゃんと気持ちを込めたいと思っていたので、役の心情になろうとしていたんですけど、今回はそうではなくて。ただその場にいて台詞を言うことが大事なんだなと、撮影しながら思いました。最初に撮ったのが、冬子が初めて出てくるシーンで……」。

――古本屋で、お客さんの青に「音楽やってたって本当ですか?」とか聞くところですね。

「そうです。今観ると、ちょっと硬いなと思いますけど、あのシーンで若葉さんの自然体に影響を受けました。私が硬くなりながら言った台詞に対し、こっちの気持ちに反応しながらラフな台詞を返してくれて。そういうふうに場にいるのが、たぶん今泉監督の映画には合っているんだろうなと。以後は台詞をどんな状況でも言えるようにしっかり入れておいた上で、現場では何が起こるかわからない中で演じていました」。


 
 

気持ちを作ると流れから逸れるので
自然に感情が動くように役を詰めます

 
 

――最初のシーンで冬子が青の音楽についていろいろ聞いていたのは、好奇心からだったんでしょうか?

「それもあったと思いますけど、大切な人が亡くなったばかりで、無理にというより無意識に、前を向くための何かを掴もうとしていたんじゃないかと、台本を読んで感じました。でも演じているときは、そういうことはまったく考えませんでした」。

――冬子の人物像について考えたところはありました?

「冬子がどういう女性かより、亡くなった店長との関係性をすごく考えました。自主映画に出ることになった青の練習を手伝うシーンがあって、そこで生前の店長のことで偶然やり取りをしたのが、冬子的に青との心の距離が縮まったポイントだと思ったんです。だから店長の死でしっかり傷ついたり、その傷が癒されるようにしたくて」。

――劇中に出てこない店長のイメージを作ったり?

「人柄をイメージするというより、2人がどう過ごしてきたかを考えて、自分でエピソードも作りました。亡くなる前にどんな話をしてきたか、亡くなった知らせをどう受けたのか……」。


――そのシーンでは涙が溢れていました。

「泣くお芝居は少しプレッシャーを感じます。でも、泣こうとして気持ちを作ったりすると、違うエネルギーが働いてしまう気がするんです。自然に気持ちが動いて涙が出るように、周りの人との関係性や役の過去を詰めていきます」。

――冬子は「結婚している人にしか惹かれない」と言ってました。

「私は恋愛と結婚を結び付けて考えてしまうタイプですけど、冬子はたぶん恋愛を遊びとして捉える一面があったんじゃないかと、理解しています」。

――終盤には、青に映画出演を持ちかけた美大生の監督の町子(萩原みのり)とやり合うシーンもありました。

「青とお芝居の練習をしていたときの思い出が冬子の中で大きくて、それをなかったことにされた気がして、傷ついたのかなと思います。演じる上でそういう気持ちの流れを作りましたけど、台本を読んだときは『そんなに突っかかることではないのに』と感じました。自分がお芝居をしていて、撮ってもカットされてしまうことはあるので」。

――そこで古川さんは怒ったりはしないと。

「だから、冬子が怒るきっかけになるフックが必要でした」。


――いずれにしても、冬子が怒ったのは青のためというより、自分の思い出に関わることだから?

「でも、青を好きになりかけているくらいに見えても、いいのかなと思いました。そこは冬子としても無意識の部分なので、あまり気を取られないようにしましたけど、お客さんがどっちに感じても楽しいと思います」。

――他に、去年夏の撮影で今も覚えていることはありますか?

「冬子が働いている古書ビビビという古本屋さんは、下北沢に本当にあるんです。撮影に入る前にすごく緊張していたので、『一度どんなところか見てみよう』と思って行ったら、お店の雰囲気がすごく良くて。お客さんがいる中で、店長さん含め、みんなが好きなように時間を過ごしていて、それを受け入れてもらえている。ちゃんと本に集中できる空間で、いいなと思いました」。

――下北沢といえば、古川さんが初主演した映画「春」は下北沢映画祭でグランプリを受賞しましたが、よく行く街ですか?

「行くのはお芝居を観るときくらいですね」。

――では、どんな街によく行ってますか?

「よく行くわけではないですけど、好きな場所は奥渋です。雑貨屋さんとか本屋さんとか、個性的で面白いお店が何軒かあるので。おいしいコーヒー屋さんも教えてもらいました」。

――普段から演技力を上げるためにやっていることはありますか?

「心は常に動かしていたいなと思っています。普通に生きていたら、私は感情を抑えるほうに走りがちなので、映画をたくさん観たり、好きなことをちゃんと時間を取ってやるようにしています。料理をしたり、かわいい洋服を探しに行ったり」。


――どんな料理を作るんですか?

「今は栄養第一でスープを作るくらいで、あまり凝った料理はしません。でも、料理の本やエッセイを読むのは好きです。自分で作ったオシャレなごはんというと、事務所の人に教えてもらったフルーツサラダかな。リンゴとキウイにカッテージチーズとピンクペッパーをコショウで和えると、すごくおいしくて。フルーツはデザートっぽいけど、コショウの味も効いていて、バランスが新しい感じでした。家で作ろうとしたらピンクペッパーがなくて、たまたまあったローズマリーを代わりに入れたら、それはそれでさわやかな味になりました(笑)」。

 
 


 
 

古川琴音(ふるかわ・ことね)

生年月日:1996年10月25日(23歳)
出身地:神奈川県
血液型:A型
 
【CHECK IT】
沖縄市の観光PR動画「チムドンドンコザ」の主演オーディションに合格して、2018年にデビュー。主な出演作はドラマ「部活、好きじゃなきゃダメですか?」(日本テレビ)、「凪のお暇」(TBS系)、「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(フジテレビ系)、映画「春」、「チワワちゃん」、「十二人の死にたい子どもたち」、舞台「世界は一人」など。JT「想うた」シリーズ「姉妹を想う篇」CMに出演中。映画「街の上で」は近日公開。

詳しい情報は公式HPへ

 
 

「街の上で」

詳しい情報は「街の上で」公式サイトへ
 

 

©「街の上で」フィルムパートナーズ
 
 

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