FRESH ACTRESS 今田美桜
PHOTO=草刈雅之 INTERVIEW=斉藤貴志
福岡で一番かわいい女の子
「民衆の敵」の天真爛漫な役で注目
――福岡から上京するとき、ご両親から反対されたんですか?
「上京のときは反対されなかったんですけど、高校卒業を前に進路を決めるときに両親と話し合いをして、進学しないことを反対されました。両親は『大学に行ってほしい』というのがあって、私も『だったら東京の大学に行く?』とかいろいろ考えたんです。でも、やっぱりどうしてもこの仕事1本でやりたかったから、ずっと押しまくりました(笑)」。
――当時から福岡で活動しつつ、地元だけに留まりたくないと?
「というより、女優さんになってお芝居がしたかったんです。それで、映画やドラマに出られるチャンスが多い東京に出てきました」。
――純粋に演技がしたかったんですね。小さい頃からそういう気持ちがあったんですか?
「いや全然。福岡の事務所に入った頃は、そこまでお芝居に興味はなかったです。CMとかをやらせていただくうちに、少しお芝居する部分があったのを『もっと真剣にやりたい』と思うようになったんです」。
――「東京もんには負けんばい」みたいなことを思っていたりは(笑)?
「いえ、ただただお芝居をやりたい一心で出てきたので、その後のことを考え始めたのは上京してからでしたね。『とにかくやりたい!』というだけでした」。
――“福岡一かわいい女の子”と言われることは、自信につながりましたか?
「まあ、そうですね。実際、福岡は街を歩いていると一般の方でもかわいい子は本当に多いんです。だから最初は、そう言われて申し訳ない気持ちのほうが強かったです。でも、ちょっと自信にはなっているのかな……(笑)」。
――そんな美桜さんが「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」でデリヘル嬢の役をやると聞いたときは衝撃的でしたが、実際にドラマで観ると、むしろ天使のような女の子ですね。
「私もオーディションを受けたときは、デリヘル嬢といったら大人っぽくて色気もあって……と思っていたんですけど、莉子ちゃんのキャラクターは本当に天真爛漫で、想像と全然違ってました」。
――風俗嬢についても一応、調べました?
「少しは調べました。けど、脚本家さんが岡崎京子さんの『pink』というマンガを勧めてくれて、それが一番しっくりきて、主人公に近づくイメージで莉子ちゃんを演じました」。
――「pink」は飼ってるワニのエサ代のためにホテトル嬢をしているOLの話でした。
「莉子ちゃんも純粋にお洋服が買いたいとか、そういうことのためにデリヘル嬢をしているので、普通の皆さんが働くのと同じ感覚なんです。だから、お仕事に抵抗もない。そんな子になろうとしてました」。
――2話の冒頭で、高橋一生さんが演じる自称渡辺さんと初めて会ったところで、莉子の本質が出ていた感じですかね?
「あそこは私の中では、ちょっと違った莉子ちゃんだと思っています。キャーキャーしているというより、母性が出た感じ? 莉子ちゃんはずっと弟の面倒を見ていた設定で、そういう面が現れたと思うんですけど、あれ以降は全然母性は見せないので」。
――あのシーンで「カッコ悪いがカッコイイ時代がくるかもしれないから、それまで頑張りましょう」と言っていたのは、渡辺さんへの励ましの気持ち?
「励ましもあるし、癒すのも彼女のお仕事のひとつじゃないですか。あのときはお仕事で来ていて、たまたま出会った渡辺さんがヨロヨロでビショビショという状況だったから、母性が働いて勇気づけたんですかね?」。
――「カッコ悪いがカッコイイ」というのは、莉子が実際に思っていたことでもあったんでしょうか?
「そうですね。自分のお仕事を恥じなくやっていることにも繋がると思います」。
――その後は「会えなくて寂しかったよ」と言ったり、ケーキを作って持っていったり……。
「女の子っぽく甘えてましたよね。本当に素直な子です」。
――渡辺さんへの感情はどういうふうに捉えています?
「最初はもちろんお客さんとして見ていた部分がありましたけど、やっぱり放っておけなかったり、呼んでくれないと逆に寂しくなったり……。ちょっと“好き”って感情が出てきても、お金のやり取りがあるから、一線を越えられないもどかしさがあるというか……。そこはすごく考えました」。
――考えないといけないことが多い役だったと?
「そうですね。テンションがすごく高い女の子じゃないですか。それで渡辺さんをどんどん巻き込んでいく。でも、私自身はそこまでテンションが高いほうではないので、いろいろ考えました。現場では皆さんが明るくてアットホームな感じだったから、入りやすさがありました」。
――高橋一生さんが女性に大人気で、一連のシーンも話題になりました。相手役としてはやり甲斐もより感じました?
「インスタグラムにたくさんコメントをいただいたり、反響はすごくありました。ただ、撮影は1話のオンエア前に全部終わっていました」。
――莉子の台詞で「靴のためなら3食抜いてもいい」というのがありました。美桜さんは3食抜いても買いたいものはありますか?
「私は食べることが好きなので、抜きたくはないですね(笑)」。
――食事自体に費やしたいと。
「私、ウインナーが大好きで(笑)、コンビニでフランクフルトとか、すぐ買っちゃいます。マスタードで食べるのが好きです」。
――高級フレンチとかイタリアンを食べたいわけではなく。
「全然。ジャンキーなものが好きです」。
映画「デメキン」のアネゴキャラは
自分に全然ないので難しかったです
――ヒロインを務めた映画「デメキン」も公開中ですが、こちらは福岡が舞台で台詞も博多弁で、やりやすかった面も?
「台詞は言いやすかったんですけど、演じたアキがアネゴキャラで、そういう部分では難しかったです」。
――自分の彼氏の友だちの不良高校生たちに「おい、お前ら!」と言ったり。
「ビビらせないといけないじゃないですか。あそこは確か初日の最初に撮ったシーンで、緊張もあって、結構テイクは重ねました」。
――アネゴ感を出すために意識したことは?
「映画の『ビー・バップ・スクール』を観て、レディースっぽい雰囲気を何となく想像しました」。
――「デメキン」の設定が90年代で、劇中に「ビー・バップ」ネタの台詞も出てましたが、20歳の美桜さんはもともと知らなかった作品ですよね?
「名前は知っていて、『デメキン』をやらせてもらうことになって観ました。男の友情とか『デメキン』に通じるところもありましたけど、それを見守る役は難しいじゃないですか。それで『ビー・バップ』の宮崎ますみさんをイメージしました。ヤンキーとか生で見たことはなくて、映画では制服の丈もすごく長いのが『あの時代はこうだったんだな』と思いました」。
――撮影していて特に印象に残ったシーンはあります?
「健太郎くんが演じる主人公の正樹と屋上で2人になるシーンですね。あそこのアキはみんなを見守るアネゴというより、厚成という男の子の彼女という部分が一番出ていたと思います」。
――強そうなアキが涙ながらに話す感じになって。
「そういう気持ちのこともありましたけど、あのときはとにかく風がすごく強かったので、屋上だったし、髪の毛とかもう大変だったのをよく覚えています(笑)」。
――劇中ではあまり出てなかったアキのバックボーンについても考えました?
「監督さんと話して、昔はレディースだった感じでいきました。もう卒業して、働いて厚成を養っている強い女性で。でも、役を掴めたかというと、ちょっと悔しい部分もあります。完成した作品を観ると『ここはもっとこうすれば良かった』というところが結構あるので」。
――観る分にはバッチリでしたけど、目標が高いんでしょうね。アキは「男ってホント何なんやろね」とも言ってましたが、ああいうケンカに明け暮れるような男どもは、美桜さん的にはどう映ります?
「単純にカッコイイと思います。自分の仲間を守るためにケンカしたり、『男の友情はすごいな』というのはありました」。
――美桜さんも殺陣やアクションや乗馬のレッスンを受けているそうですね。
「そうなんです。だから、いつか自分でもアクションをやりたいです」。
――運動神経はいいんですか?
「運動は好きですけど、よく『どんくさい』と言われるので(笑)運動神経はそんなに良くありません。脚を高く上げたりはまだ難しいです」。
――「めざましテレビ」では流暢な中国語を披露していました。
「英語すら全然しゃべれないんですけど、上京してくるとき、何かひとつ外国語を身に付けたいと思って勉強しています。台湾映画に興味があったのと、事務所のほうからの勧めもあって中国語にしました」。
――どんな台湾映画を観ていたんですか?
「『あの頃、君を追いかけた』という作品が好きです。高校生からの初恋の物語で泣ける映画です。そういう作品で中国語で演技したいと思ってます」。
――毎日忙しいかと思いますが、どういうタイミングで中国語を勉強しているんですか?
「最近は行けないときもありますけど、週に1回は先生のレッスンを受けるようにしています」。
――休みの日もアクションや中国語のレッスンをしていたり?
「そうですね。本当に何もない日は家にいます。出掛けるより、家で映画とか観るタイプです」。
――東京にお気に入りの場所ができたりはしてません?
「素敵なところはいっぱいありますよね。私は浅草が好きで、食べ歩きをします」。
――浅草で食べ歩きというと……。
「メンチカツとか……浅草の名物じゃないのかな? でも、『浅草メンチ』というお店があって、そこのメンチカツが好きです」。
――さっきはウインナーの話もありましたが、食に関しては庶民派?
「はい。ファーストフードが好きで、高級なところにはなかなか行けません」。
――ちなみに血液型はA型だそうですが、几帳面なタイプですか?
「全然几帳面じゃないです。大雑把で、よくO型と間違われます。モノをいろいろなところにポンポン置いちゃって、携帯とかすぐどこかにやっちゃいます。そのたびにいろいろ探して、洗面台に置きっぱなしだったり、キッチンにあったり、リビングのテーブルに置いてあったりで、いつも迷子になってます(笑)」。
――お正月は帰省するんですか?
「そうですね。いつも行ってる神社でお参りしたいです」。
――2018年はどんな1年にしようと?
「お仕事を本当に頑張りたいです。台本をもらったら、さらに深く役に入り込める年にしたいですね」。
――お芝居がしたくて上京して、やっていくうちにより楽しくなっている感じ?
「そうですね。徐々にお芝居をさせていただく機会が増えて、とりあえず夢が叶って、それが今、楽しくて仕方ないです。役をもらって『この子はどんなことを思っているんだろう?』とか、いろいろ考えるのが面白いです」。
――逆に、演技で壁に当たって悩むことはなく?
「毎回壁に当たってます(笑)。でも、それも含めて、本当に楽しいんです」。
今田美桜(いまだ・みお)
生年月日:1997年3月5日(20歳)
出身地:福岡県
血液型:A型
【CHECK IT】
高校2年生のときに福岡でスカウトされてモデルデビュー。2015年に「罪の余白」で映画に初出演。2016年夏に上京。「福岡で一番かわいい女の子」として話題になる。これまでの主な出演作は映画「ダブルミンツ」、「帰ってきたバスジャック」、ドラマ「僕たちがやりました」(カンテレ・フジテレビ系)など。現在、ドラマ「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」(フジテレビ系/月曜21:00~)に出演中。ヒロインを務めた映画「デメキン」が公開中。アサヒワンダ「彼氏」篇、九州電気保安協会、日本マクドナルドのCMに出演中。2018年には出演した中国映画「一夜再成名」が日本公開。
詳しい情報は公式HP
「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」
詳しい情報は公式HP
「デメキン」
詳しい情報は公式HP