PICK UP ACTRESS 小野莉奈
PHOTO=河野英喜 HAIR&MAKE=尾曲いずみ
STYLING=瀬川結美子 INTERVIEW=斉藤貴志
衣装協力:ユウミアリア/株式会社ARIA(03-5467-8610)
映画「アルプススタンドのはしの方」に主演
甲子園で試合を見つめる夢破れた演劇部員役
――5月で20歳になって、何か変わったことはありましたか?
「掃除、洗濯、料理と、自分のことをちゃんと自分でするようになりました」。
――19歳まではやってなかったんですか?
「やってはいましたけど、溜めがちといいますか、お掃除でも『まあ、いいや』って感じだったんです。それが『部屋の乱れは心の乱れ』と思うようになって。根本的に、物を出したらしまう癖を身に付けたんです。お掃除する回数を増やさなくても、そもそも汚れなくなりました」。
――いい習慣付けができたんですね。
「前はポンポン出しっぱなしなところがあったんですけど、今はシンクにお皿が溜まっているのも嫌で『食べたら、すぐ洗う! すぐ戻す!』みたいな(笑)」。
――そういうことが、20歳になった途端にできるように?
「私の場合、前から20代になることで『変わるぞ!』という気持ちが大きくて、助走みたいなものがあったんです。人と接するときも自分本位ではなく『相手を楽しませたい』とか、心の余裕がちょっとできた気がします」。
――それも大きいことですね。
「私は人見知りな部分も若干あって、しゃべれない人とはしゃべれなかったんです。でも、そういう人と話してみたら、意外と面白かった経験もしました。だから第一印象に捉われず、いろいろな人たちと話したくなったし、視野が広がって生活が楽しくなりました」。
――主演映画「アルプススタンドのはしの方」が公開されますが、もともとは昨年、舞台版が上演されました。莉奈さんの初舞台でしたが、満足のいくお芝居になりました?
「毎回、台詞を間違えたり、稽古通りにいかなかったりしながら、反省して次という感じで、どんどん進化はしていけたと思います。初日には台詞がポンと抜けちゃったところがありました」。
――そこでどうしたんですか?
「本当に『出てこない、出てこない、出てこない……』みたいな感じで、共演のみんなが『アレはさ』とか言って思い出させようとしてくれたんですけど、1分くらい経ってしまって。そうこうしているうちに『あっ!』となって、ポンと言えました」。
――長く感じた1分間だったでしょうね。
「台詞を忘れたのがバレてるのか、バレてないのか。言葉が出ないのを演出に見せないといけない。そんな気持ちが強くて、舞台ならではの緊張感でした」。
――物語の舞台は高校野球の甲子園大会。莉奈さんが演じた安田あすはは、観客席の端っこで試合を観ている冴えない4人の1人。映画でも面白い掛け合いがありましたが、ポンポンしゃべる役はハマりました?
「舞台で1カ月みっちり稽古して、映画もあまり間を置かずに撮影したので、染み付いていました。舞台のときは、私はテンションが落ちがちな癖があって、そうすると感情をうまく出しきれなくて。だから、単純に声を大きくしたりしてベースのテンションを上げて、ポンと出せるようにしました。あと、相手の表情や目を見て、気持ちを感じることもしました」。
――映画だと、実際に野球場で撮影したのも大きかったのでは?
「舞台は5人だけで出ていたのが、映画ではエキストラさんがいっぱいいて、人が多いと応援の熱量も大きくなるのは感じました」。
――莉奈さんは実際、野球部の応援をしたことはあるんですか?
「中学時代、サッカー部の応援に行ったことはあります。中学最後の試合で、同級生の、学校では見ない懸命な姿を『カッコイイな』と思いました。応援するのも楽しいと感じましたけど、その分、疲れました(笑)」。
――莉奈さん自身はダンス部だったんですよね?
「はい。ダンスは中学から習い始めて、学校ではダンス部がなかったので高校から入って、全国大会まで行きました」。
――すごい。本格的にやっていたんですね。
「部員は仲間だけど、『誰よりもうまく踊りたい』ってライバル視していた部分もあって、部活の後にダンススクールにも通い続けました。その他に塾にも行って、自分で自分を追い込んでましたけど、ダンスは情熱を持って頑張っていましたね」。
自分ができないからって諦められないけど
今は「しょうがない」となるのもわかります
――特に記憶に焼き付いている青春の思い出というと?
「私は部活も友情も恋愛もそれぞれに悩んでいました。つらかったことがあった分、自分で何とか変えようとしていたら、楽しさも鮮やかになりました。中1のときは自分に合う友だちがいなかったのが、中2で本当にいい友だちと出会えて、学校生活が楽しくなったり」。
――あすはは演劇部での自分の夢は破れて「しょうがない。受け入れるしかない」と言ってました。そういう気持ちになったことはありませんか?
「私はないですね。あすははどうしようもないことが原因でしたけど、私は自分ができないから諦めて『しょうがない』ということはないです。目標を達成できなかったら、自分にどう言い訳しても、心残りになる。それが許せないから諦められないんです」。
――ダンスもやり切ったと?
「仕事を始めたとき、部活は辞めてしまいましたけど、高1のときは最後までやり切って、リーダーになって引っ張っていきたい想いもありました。まさか途中で辞めるとは思わなかったです。でも、そこは『しょうがない』というより、夢を切り替える決意をした感じでしたね」。
――奇しくもこの夏は、コロナ禍で甲子園大会もインターハイも中止になってしまって。あすはの心情に共感する人は多いかもしれませんね。
「あすはが『しょうがない』と言っていた気持ちが、今だからこそ、わかるのかなと思います。そういう部分で、今の時代に繋がってる部分はありますね」。
――あすはが「意味ないでしょう。グラウンドに出れない人間がどれだけ頑張ったって!」と叫ぶシーンは、行き場のない怒りが爆発した感じでしょうか?
「あすははたぶん、ずっと『しょうがない』と自分に嘘をついていて、諦めきれてなかった気がするんです。それでも、『しょうがない』と言い続けるしかなくて、ストレスを感じていた分、こみ上げてきた感情が爆発したんだと思います」。
――莉奈さんはそういうふうに感情が爆発することは?
「普段のあすはは人の前では感情を抑える子だと思うんです。私は逆に、人と話しているうちに自分の気持ちが明確になって、感情が爆発するみたいです。でも、怒ったりはしません。怒りが悲しみに変わるタイプですね。1人では泣けないんですけど」。
――ダンス部でもそういうことはあったんですか?
「一緒にダンスをやっている子たちの前では出さなかったんですけど、どうしようもなく悲しくなったとき、親友や他の部活の子に相談して、ワァーッとなったりはしました」。
――舞台、映画とこの作品に携わって、野球にも興味が出ました?
「この作品をやってなかったら、今年甲子園がないことも、たぶん人ごとだった気がします。野球部を応援する役をやったから、自分でも『悲しいな……』と思いました。野球のワードが出てくると『何だろう?』と気になるようにもなりました」。
――そんなご時世ですが、この夏にやりたいことはありますか?
「軽井沢に行って、自然を感じたいです。去年は行けなかったので、家族とのんびりしたい。アウトレットに行ったり、温泉に入ったり、おいしいものを食べたいです」。
――テニスもやるんですか?
「やったことはあるんですけど、まったく楽しめなくて、やめました(笑)。いじけて泣いて、怒られて終わったという、トラウマがあります(笑)」。
――普段の生活の中では、夏の小さな楽しみとかはあります?
「スイカを食べることですね。大好きなので、ひと玉買ってきて半分食べます。半分でも結構な量ですけど、次の朝に残りの半分を食べて(笑)、それで夏を感じたりします」。
小野莉奈(おの・りな)
生年月日:2000年5月8日(20歳)
出身地:東京都
血液型:AB型
【CHECK IT】
2017年にドラマ「セシルボーイズ」(フジテレビ)で女優デビュー。主な出演作はドラマ「中学聖日記」(TBS系)、「絶対正義」(東海テレビ・フジテレビ系)、「100文字アイデアをドラマにした!」(テレビ東京)、映画「アンナとアンリの影送り」、「テロルンとルンルン」、舞台「アルプススタンドのはしの方」など。映画「アルプススタンドのはしの方」は7月24日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。写真家・丸谷嘉長氏とのフォトセッションが作品掲載サイト「Negative pop」<https://negativepop.net>で公開中。
詳しい情報は公式HPへ
「アルプススタンドのはしの方」
詳しい情報は「アルプススタンドのはしの方」公式サイトへ
©2020「アルプススタンドのはしの方」製作委員会