PICK UP ACTRESS 桜田ひより
PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志
劇場アニメ「薄暮」で声優に初挑戦
福島の女子高生の恋を瑞々しく好演
――もともとアニメは好きだったんですか?
「はい。ラブコメよりアクションものをよく観るかもしれません。今、自分の中で注目しているのは『鬼滅の刃』です」。
――原作が「少年ジャンプ」で連載中の和風伝奇ものですね。今回の「薄暮」が声優初挑戦となりましたが、自分の声についてはどう思ってました?
「いろいろな方から『良い声だね』と言われることは多かったです。でも、自分では良い声なのかはわかりません」。
――実写作品ではひよりさんは自然と役に入れるそうですが、アニメでもそれは変わりませんでした?
「感情を表現するのは、すごく難しかったです。映像だと表情や動き方でも感情の伝わり方が全然変わると思いますけど、たとえば声だけで嬉しさを伝えようとしてトーンを高くすると、まるっきり別人に聞こえちゃったりもするんです」。
――なるほど。
「私が演じた佐智ちゃんはさらに特殊で、1人でいるときの心の声と、恋の相手の雉子波(きじなみ)くんといるとき、家族といるとき、友だちといるときで、全然話し方が違うんです。だけど同じ人に見えるようにするのは、本当に難しいと思いました」。
――アフレコをする前に何か準備でしたことは?
「声優の仕事が初めてで、わからない部分がたくさんあったので、台本を音がしないようにめくるとか、マイクに息がかからないように斜めから声を入れるとか、そういうことは家でたくさん練習しました」。
――本番はどうでした?
「やっぱり初めてだったので、自分がちゃんとできているのか、不安になることもありましたけど、やってみたら楽しかったです」。
――難しい演出があったりは?
「細かいご指導はいただいて、同じシーンで2パターン録ったりはしましたけど、監督は『呑み込みが早いね』と誉めてくださったので、大丈夫だったのかなと思います」。
――佐智はバイオリンを弾く女の子。実写のようにひよりさんが実際に弾くわけではありませんが、体感をつかむためにバイオリンに触れてみたりはしませんでした?
「バイオリンを借りられるところがなくて、触る機会はなかったのでイメージしただけでした。でも、声を録ったあとに主題歌のMVを撮影して、そのときに監督が使っているバイオリンを持たせてもらいました」。
――山本寛監督がバイオリンを持っていたんですか?
「習ってらっしゃるそうです。それで私も一応弾いてみたんですけど、やっぱり素人にはうまく音を出せなくて、笑ってしまいました(笑)。でも、『佐智ちゃんはこういうふうにやっていたんだな』というのは感じられました」。
――ひよりさんは何か楽器は弾けるんですか?
「全然できません(笑)。クラスに3人くらいはピアノを弾ける子がいて、ハーモニカとかが得意な子も周りにたくさんいましたけど、私はリコーダーもうまく吹けなくて……。1年に2回くらい、音楽でリコーダーのテストがあって、一向にダメで恥をかくだけ(笑)。楽器は苦手でした」。
――ひよりさんは佐智について、「気持ちを表に出さず、深く考えてしまうところが自分と似てる」とコメントしてました。そう感じた場面があったんですか?
「この作品の中で、佐智ちゃんは雉子波くんと話しているときが、たぶん一番素を出せていないんです。家族といるときはリラックスしているけど、雉子波くんとはどうしても恥ずかしくて、うまくしゃべれない。私も初対面の人とかだと緊張しちゃうので、そういうところは似てると思いました」。
――佐智は仲良しの友だちと話しているときも聞き役でした。そういうところも似てますか?
「私は相手によって違う感じがします。『この子の話を聞きたい』という人もいれば、自分の話をしたい人もいるし、“聴いて、話して、聴いて、話して”というリズムが心地良い人もいます」。
――佐智みたいに「晴れた夕暮れは1人で歩いて帰るのが好き」ということは?
「私は1人より、誰かと歩くほうが楽しいです(笑)」。
真剣に絵を描く姿に惹かれて
目が合った瞬間に「あっ」と
――佐智にとっての薄暮の田舎の坂道みたいな、お気に入りの風景はあります?
「私は一回引っ越しをしているので、めちゃくちゃ愛着のあるところはないかもしれません。でも事務所でレッスンがあって、同じ所属の人たちと一緒にいる空間はすごく好きです」。
――あと、佐智はモヤモヤするとディーリアスという作曲家の曲を聴いてましたが、ひよりさんはモヤモヤしたときにすることは?
「おいしいものを食べます。モヤモヤしたときだけではなく、『よし頑張ろう!』というときや、頑張ったごほうびに食べようと思うのは、焼肉や牛タン。ガッツリ食べる派です(笑)!」。
――へーっ。ちょっとひよりさんのイメージと違うかも(笑)。
「そうですか? バクバク食べますよ(笑)。お仕事の合間のお昼ごはんはパスタが多いです。トマトクリーム系で、麺が平たいフィットチーネのパスタがすごく好きです」。
――こだわりがあるんですね(笑)。「薄暮」はのどかな風景の中での、佐智と雉子波くんのほのかな恋がノスタルジックな感じがしました。ひよりさんが好きなシーンはどの辺ですか?
「最初に佐智ちゃんが1人で薄暮を見ているところは、すごくきれいだなと思いました。劇中に出てくるところは、だいたい実際にいわき市で見られる光景なんです。私もMV撮影のとき、佐智ちゃんと同じ道を歩いて、本当に薄暮を見ました。心が洗われるようでしたね。作品の中でも景色はきれいに描かれていて、すごかったです」。
――雉子波くんは東日本大震災での経験も踏まえて、「この世界を描きとめておきたい」と話してました。
「私は絵は上手くないので、描きとめておきたいというのはないですけど、写真に撮るか目に焼き付けておきたいです。やっぱり同じ光景はその日にしか見られないので」。
――ひよりさん目線では、雉子波くんのことはどう思います?
「たぶん佐智ちゃんが雉子波くんに惹かれたのは、絵を真剣に描いていたり、真面目な部分なんですよね。自分と一緒にいるときにその姿を見せてくれて、『あっ、いいな』と思った瞬間があって……。私自身も映像を観ていて、隣りで絵を描いていた雉子波くんとフッと目が合うところとか、惹かれるのがわかると思いました」。
――LINEを交換したあとは、佐智は夜道をスキップして帰ってました。
「そうですね。スタンプを送り合ったりしてました。やっぱり自分が気になっている人とLINEしていたら、テンションが上がりますよね」。
――雉子波くんは大胆なところもありますよね。会ったばかりの佐智に「明日も一緒にいい場所を探してくれませんか?」と頼んだり。
「そんなこと、あまり言いませんよね(笑)。でも、佐智ちゃん自身も雉子波くんのことをよく知らなかったのに、一緒に回りたい気持ちがあったんだと思うし、絶対うれしかったんでしょうね」。
――そんなこんなは、佐智と同世代のひよりさんとしては、リアルに感じますか?
「ああいうことはそうそう言われないので(笑)、わかりませんけど、自分でも不思議な気持ちになるだろうなとは思います」。
――佐智が急に料理を始めて、家族に驚かれるひと幕もありました。ひよりさんは料理はするんでしたっけ?
「野菜を切るくらいです(笑)。『料理でストレス発散する』という知り合いもいますけど、私は包丁を持つのが怖すぎて、自分の指を切っちゃいそうで(笑)、料理は苦手です。できたらいいなとは思ってますけど」。
――今年も半分が終わりますが、上半期で自分の中で大きかったことというと?
「元号が変わったのはビックリしました。あと、初めてファミリーリングを作りました。家族4人で付ける指輪を4人で作りに行ったのが思い出です」。
――どういう流れで作ることになったんですか?
「私はもともと指輪が好きで付けていて、兄も指輪が好きなので、『いいタイミングだから』とみんなで作ることになりました」。
――仲の良い家族なんですね。
「そうですね。その指輪が最近届いて、まだ付けたてホヤホヤ。自分で選んだ柄も『これにして良かったな』と思いながら歩いてます(笑)」。
桜田ひより(さくらだ・ひより)
生年月日:2002年12月19日(16歳)
出身地:千葉県
血液型:A型
【CHECK IT】
小学6年生のときにドラマ「明日、ママがいない」(日本テレビ系)に出演して注目される。主な出演作はドラマ「ワイルド・ヒーローズ」(日本テレビ系)、「ホクサイと飯さえあれば」(MBS・TBS系 ほか)、「犯罪症候群」(東海テレビ・フジテレビ系)、「あなたには帰る家がある」(TBS系)、映画「にがくてあまい」、「東京喰種 トーキョーグール」、「咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A」、「祈りの幕が下りる時」、「ういらぶ。」など。「ミスセブンティーン2018」に選ばれ、「Seventeen」(集英社)の専属モデルに。アニメ映画「薄暮」は6月21日(金)より全国ロードショー。映画「ホットギミック ガールミーツボーイ」が6月28日(金)、「東京喰種 トーキョーグール【S】」が7月19日(金)、「男はつらいよ お帰り 寅さん」が12月27日(金)より公開。
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「薄暮」
詳しい情報は「薄暮」公式サイトへ