PICK UP ACTRESS 山田杏奈

PICK UP ACTRESS 山田杏奈

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「五億円のじんせい」に出演
共に入院していた主人公を支えた役

 
 

――「五億円のじんせい」はいつ撮影したんですか?

「去年の6月です。ドラマの『幸色のワンルーム』と同じ頃に撮りました」。

――映画の中の杏奈さんと今の杏奈さんを比べると、顔立ちがだいぶ大人っぽくなってません?

「自分で見ても、この1年くらいでめちゃめちゃ顔が変わったと思います(笑)。年相応になっていけたら、いいですね」。

――この映画は、幼い頃に善意の募金5億円で手術した17歳の高月望来(たかつき・みらい)が主人公。杏奈さんは同じ小児病棟に入院していた橘明日香(たちばな・あすか)役で、望来の回想シーンで少女ながら哲学的なことを言ってました。「雨って生きるのに必要な水がただで降ってきてすごい」とか。

「『なるほど』と思いましたし、確かに哲学的ですけど、言いにくさはまったくなくて、むしろ、全体的に台詞はすごく言いやすかったです。小さい頃から病院にいる明日香ならではの視点で、“生”に対して普通と違う見方をしているからこそ、出てくる言葉だと思いました」。


――杏奈さんも思慮深いタイプかと思いますが、雨を見て何か考えたことはありますか?

「ないです(笑)。でも、雨の匂いは好きです。カンカン照りの日より落ち着くし、一番好きなのは曇りですけど、『雨か。イヤだな』とは思いません。私は家にいるとき、あまりテレビをつけたりしなくて、雨の音がずっと聞こえる状態は嫌いではないです」。

――何か杏奈さんらしいですね。明日香は「大人は自分に嘘つくの。悲しかったり悔しかったりするときにごまかすの」とも言ってました。

「台本を読んだときは『私はまだそこまで大人じゃないな』と思って、自然と自分を子ども側に置いてましたけど、1年近く経って映画を観たら、大人目線で『嘘をついてごまかす』ことのほうを考えていました。価値観が変わったのかもしれないと、今思いました」。

――大人ではなくても、たとえば悲しみをやり過ごすために自分をごまかすというか、感情を悲しくないように仕向けることはありません?

「1人でいろいろ考えているときに、そういうこともしているのか、どれが自分の本心かわからなくなってしまうことは、あると言えばあります。でも、やっぱり普通に『こうなればいいのに』というだけで、自分に嘘をつけるほど大人ではない気がします」。


――病気を抱えて生きている明日香の心情についても、いろいろ考えました?

「私は入院したことがなくて、ずっと病院にいる状況は想像しかできませんけど、小さい頃から普通の子と違って、人の生と死に身近で接してきたんだと思います。明日香はいろいろな意味で物ごとを達観しているし、落ち着いていて、悩みもあるんでしょうけど、望来の前では見せずに明るく振る舞う。私より大人に感じました。自分ではどうにもできないことと、できることのラインがわかっている子だなと考えていました」。

――望来に「死んだらどうなるの?」と聞かれて、「自由になって旅に出るんだよ」と答えたりもしてました。杏奈さんは「人は死んだら……」とチラッとでも考えたことはありますか?

「想像できないからこそ、死んだらもうひとつ、自分の知らないことが待ち受けているかもしれないと考えたほうが、希望が持てると思います」。

――明日香が幼い望来を抱きしめたときは、どんな気持ちだったんでしょうね?

「望来が死のうとしていたのは、たぶん昔の明日香自身も考えたことのままで、目の前にいる小さな子が同じようにいろいろ悩んでいるのは、どうしようもなく辛い。『この子を守らなきゃ』と思ったように感じました」。

――明日香は涙を浮かべて遠い表情をしていました。

「目の前であんな小さい子が『自分がここにいるから誰かの負担になっている』と考えていたら、誰でもやるせなくなるでしょうし、お互いどうにもできない病気になってしまったのを『何でこんなことに……』とも思っていたんでしょうね」。

――17歳になった望来は、自分で五億円を稼いで“借金”をチャラにしてから死のうと、家を出ます。そして終盤にも、杏奈さんの出番がありました。

「望来の中で明日香は、やさしくて明るい姿だけが残っているお姉さんだったと思いますけど、同じことをしても今度は等身大で、『私だって悩んでいるんだ!』という。望来が五億円の寄付で助かったことなんて関係ない。17歳くらいはいろいろな選択肢で悩むにしても、望来がああいう状況になっていることに怒りもあるかなと思いました」。


 
 

人間は表面に出たことがすべてではないので
心の中ではどうなのかを常に考えています

 
 

――杏奈さんは役について質問すると深い言葉を返してくれますが、演じている時点で掘り下げて考えているんですか?

「今回は明日香に魅力がないと、成り立たないと思いましたから、死のうとしている望来を引き戻す力がないといけない。それはやっぱりパワーがないとできないことで、説得力を持たせるにはどうしたらいいか、たくさん考えましたね」。

――この作品に限らず、杏奈さんの演技はただ泣くとか叫ぶとかではなく、心の深いところで震えている感じがして胸を打たれます。

「いつも考えるのは、人間はやっていることがすべてではないじゃないですか。たとえば『表面的にはこう言ってるけど、心の中ではこう思っている』というのは常にあるはずで、それは全部考えるようにしています。表面的なお芝居にならないように、すごく気をつけています」。

――確かに、泣くことだけが悲しみの表現ではないでよね。

「でも、いくら私が何時間と考えたところで、その役の人生の10何年分は埋められないので、そこでどれだけ想像できるか。すべて理解することは難しいとしても、なるべく近づきたいとはいつも思ってます」。


――劇中の杏奈さんが出てなかった部分ですけど、「やさしい奴がいるのでなく、やさしくしてやりたくなる奴とそうじゃない奴がいる」という言葉がありました。それは腑に落ちました?

「人間って自分自身ではなく、周りの存在で成り立っていると思うんです。お芝居で考えるのも、自分がどうなのかではなく、人からどう受け取られるかがすべてではないかと。それこそ哲学的な話になっちゃいますけど、人は他の人の意識によって成り立っているものかなと思ったりもします。そういう意味では、他人が見て『やさしくしてあげたい』と思うのか、そう思われないのか……と分かれるのはわかります。答えになってますか(笑)?」。

――すごく的確なお答えをいただいたと思います。

「周りの人がみんな自分のことを知らなければ、自分は存在してないとか、そういう話もあるじゃないですか」。

――哲学の「反実在論」ですかね。

「その考え方を知ったとき、『そうかもしれない』と思いました。だから台本を読んでいても、自分の役について書かれた情報より、周りの人がその役についてどう言っているかで、8割方わかる気がします。『周りの人がこう接しているから、こんな人だろうな』というのが大きいと、最近思うようになりました」。


――前回「小さな恋のうた」で取材させてもらったときは「日本舞踊や乗馬をやりたい」という話がありました。2カ月しか経ってませんが、その後に始めたりは?

「ネットで調べていて、まだこれからです。でも、本当にやりたいと思ってます」。

――日本舞踊は何でやりたいと思ったんですか?

「今後は時代劇もやりたいし、そういうときに役立つと思ったんです。普段の生活の中で着物を着る機会はないし、所作もちょっとずつ学んでいきたいです」。

――乗馬のほうは?

「前にご一緒した方が乗馬をやってらっしゃって、お話を聞いて興味が湧いたのと、単純に馬に乗ってみたいので(笑)。動物は好きで、実家では犬を飼ってますけど、馬とも触れ合いたい気持ちがあります」。

――この夏あたりにやれそうですか?

「できればいいですね。あと、1年くらい前からずーっと思っているのが、川に行きたいんです。自然に触れたくて。虫がいるのが問題ですけど(笑)、今年こそは行きたいです」。

――最後に「五億円のじんせい」にちなんで、もし五億円が手に入ったら、何に使いますか?

「五億円……欲しいなー(笑)。一生かかっても使い切れないんじゃないですか? 使い切れるんですかね? 想像もつきませんけど、まず旅行したいです。世界のおいしいものを食べて、いろいろな人と出会って、新しい価値観が生まれたら『お金をこう使おう』とわかるかもしれない。いろいろ発見したいです」。


――物欲はあまりないですか?

「服が好きです。古着も着ますし、新しいのも買います。好きな系統とかはなくて、出会って『欲しい!』と思ったら買うタイプです。五億円あれば、好きなだけ買えますよね。『ここからここまで全部ください』と言うのは夢です(笑)」。

 
 


 
 

山田杏奈(やまだ・あんな)

生年月日:2001年1月8日(18歳)
出身地:埼玉県
血液型:A型

 
【CHECK IT】
「ちゃおガール2011☆オーディション」でグランプリを受賞。2016年に「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」で実写映画に初出演。主な出演作は、ドラマ「先に生まれただけの僕」(日本テレビ系)、「わたしに××しなさい!」(MBS・TBS)、「幸色のワンルーム」(ABC/主演)、映画「咲-Saki-」、「あゝ、荒野」、「ミスミソウ」(主演)、「小さな恋のうた」など。映画「五億円のじんせい」は7月20日(土)よりユーロスペース他にて全国順次公開。ロッテ「ガーナミルクチョコレート」イメージキャラクター。写真集「PLANET NINE」(東京ニュース通信社)が発売中。
 
詳しい情報は公式サイトへ
 
 

「五億円のじんせい」

詳しい情報は「五億円のじんせい」公式サイトへ
 
 

 

 

©2019 『五億円のじんせい』NEW CINEMA PROJECT
 
 

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