PICK UP ACTRESS 山口まゆ

PICK UP ACTRESS 山口まゆ

PHOTO=小澤太一 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

映画「下忍 赤い影」で時代劇に初出演
忍者たちが争奪戦を繰り広げる強い姫役

 
 

――女子大生になって半年が経ちました。

「仲の良い友だちができて、その子は地方から上京して一人暮らしなので、よく泊まりに行ったりしています。夏休みには3年生が実習で制作している映画に声を掛けてもらって、先輩たちと交流できて、『ああ、大学生って感じ』と思いました」。

――テストやレポートもあるんですよね?

「ちょうど昨日、宿題を終わらせました。ミュージカル映画を1本観て、1200字くらいのレポートを出すんですけど、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を題材に、他の作品との比較やカメラワークについて書きました」。

――仕事との両立は大変ですか?

「学校には行けたり行けなかったりで、テストは受けられるようにうまく調整したと思ってますけど、お仕事と違う環境でちょっと息抜きもできるほうが、自分は楽です」。

――高校までもそうでしたからね。それで、幕末を舞台に時代遅れとなった忍者を描く映画「下忍 赤い影」に薩摩藩の姫・静役で出演してますが、初の時代劇ですよね?

「初めてでした。時代劇をちゃんと観たこともなくて、この作品をやるに当たって、監督から言われて黒澤明さんの『隠し砦の三悪人』を観たり、幕末のお姫様の本をもらって勉強しました」。


――着物を着る機会もそんなになかったのでは?

「初めて着ました。きついほうが引き締まる感じがして、着心地は悪くなかったんですけど、旅をしているシーンで足袋が指に食い込んできて、痛かった記憶があります。あと、エクステで髪を長くしていて、ケアが大変でした。私はショートカットなので、エクステを20個くらい、シールで張ってゴムで髪と何カ所も結んで付けたんですけど、撮影で日光に1週間くらいいた間、とにかく髪が乾かないんです」。

――毎日の撮影が終わったら、外せるものでもないんですね。

「取り外しができなくて、クランクインして終わりまで付けてました。だから、お風呂に入ると大変で、お人形さんの髪みたいなので、ドライヤーを1時間くらいかけないと乾きませんでした(笑)」。

――演技的にも、時代劇ならではのことはありました?

「やっぱり台詞ですね。言い回しが難しくて、『こんなに言葉が頭に入らないのか』というくらい苦戦しました。外国語をしゃべっている気分になるほど感覚が違いすぎて、そこに感情も持っていくのは大変でした」。


――観ていると、それほど昔の言葉みたいな感じはしませんでした。

「ガッツリ時代劇という台詞ではなかったんですけど、やっぱり私は初めてしゃべる言葉だったので、苦労しました」。

――史実とそこまでリンクした物語ではありませんが、幕末の時代背景については調べたんですか?

「そうですね。私が演じた静はモデルがいたわけではない架空のお姫様ですけど、その時代のことを調べたり、監督にもらった本も参考にしました。お姫様はいろいろな人を動かして位が高いので、プライドは捨てたらいけない。静は『女だからって、すだれの向こうに座らせられるのはごめんだわ』と言っているので、強さも全面に出したい。一方で、外の世界を知らない幼くてかわいい部分も見せることは、最初から心掛けました」。

――か弱いニュアンスの“お姫様”ではなく、毅然とした強さを持つ女性でした。

「そこだけは絶対ブレたらいけないと思って、常にバリアを張っているようなところは残しておきました」。

――就寝中も常に短刀を携えて、嫁ぎ先の江戸から薩摩へ奪還するために忍び込んできた竜(寛一郎)にも刃を向けました。

「いつも胸の前に刀を構えていて、寝ていても誰かが来たらパッと反応する。警戒心が強くて、あれを持って自分の身を守っていたんですよね。私の唯一のアクション……とまでは言えませんけど、布団からパッと起きて刀を構えるところは、観ている方には静の第一印象になるので、『もっと力強く』と監督からご指摘いただいて撮りました」。


 
 

いつもは内面から役に入るけど
姫役は形から内面を探りました

 
 

――静は侍にも「自分たちの都合で人を振り回すのをやめなさい!」と言ってのけました。堂々とした演技でしたが、まゆさん自身もああいうことは言えるタイプですか?

「言えないですね(笑)。自分の中で『それは絶対違う』と固まっていたら、もしかしたら言えるかもしれませんけど、フワフワして確信がなかったら、ちょっと出ないと思います。静は自分の中で確信があったんでしょうね。それはお姫様には必要なことですけど、私はそんなに強くはないです(笑)」。

――静も森の中で迷ったときは、竜に「1人は怖い」と言ってました。

「あそこは霧に見せるスモークをたくさん炊いて、前が見えなくて、本当にちょっと怖かったです(笑)。足場も悪くて雑草が膝くらいまであって、着物なのに大股で歩きました」。

――姫としての気品も意識したんですか?

「基本ですけど、姿勢を良くすることは心掛けました。あの時代を生きている姫として、自然に身に付いた気高さはなくしたらいけない。プラス、警戒心を常に持って周りを見渡すイメージがあったので、そこは意識しました」。

――さっき出た「幼くてかわいい部分」は、神社で狛犬に自分の笠をかぶせるところとかで、現れてましたかね?

「そこもですし、竜と一緒にいるときに、女の子らしさがこぼれるようにしました。お姫様の強さとのギャップを出せたらと思っていました」。


――「迷ってるところを見せるんじゃねえよ」とか、竜との面白いやり取りもありました。

「あれも楽しかったです。私にはすべてが新鮮で、ああいうところは竜が引き出してくれて、寛一郎さんと一緒にできて良かったです」。

――まゆさんの演技にはいつも、役が背負ってきた人生が見えるリアルさがありますが、そこは時代劇で姫を演じても変わりませんでした。

「時代劇というものが自分には未知の世界すぎて、少し形から入ろうと思いました。役の内面から入ることも大事ですし、そこから役に近づくのがいつもの私のやり方ですけど、今回はお姫様に形から近づいて中身を探っていくスタンスでした。キザな言い方や時代劇ならではのカッコつけ方も、そういう今までにないやり方で試せて、楽しかったですね」。

――キザというと「尻尾を振ってついていくほど素直じゃないわよ」といった台詞がありました。

「『面白そうじゃない』みたいな台詞を言っていて、普段の私ならこっぱずかしいようなことも、姫としてできる。いい経験をさせてもらいました。最後に1人1人抜きで撮るところは、好きなシーンです。『なんでこんなに上から目線?』と思いましたけど(笑)、わがままでちょっとかわいらしいお姫様と、忍びの竜たちとのバランスがいいなと感じました」。


――最後のほうには、周りでドカンと爆発が起こる場面も。

「リハーサルのときは『リアルさが増すように悲鳴を上げて』と言われて、ワーキャー叫んでましたけど、本番ではかなり大きな爆発で、本気でビビッて悲鳴を上げてました(笑)。来るとわかっていても、ビックリします」。

――いろいろありつつ、初めて出演した時代劇として、出来上がりにどんな感想がありました?

「ああいうお姫様で正解だったのか、不正解だったのかわかりませんけど、アクション中心の映画で寛一郎さんたちがとてもカッコ良かった中で、私も強いお姫様として参加できたのは新鮮でした」。

――映画が公開されると、ハロウィンとかクリスマスとかイベントごとの多い季節になりますが、そういうのは盛り上がりますか?

「盛り上がらないかもしれません(笑)。冬は好きで、クリスマスのライトアップにワクワクして、家族でケーキを食べますけど、ハロウィンはお菓子をもらったら『やった!』というくらいで、特に何もしません(笑)」。

――仮装して渋谷に繰り出したりは?

「それはないですね(笑)」。


 
 


 
 

山口まゆ(やまぐち・まゆ)

生年月日:2000年11月20日(18歳)
出身地:東京都
血液型:A型
 
【CHECK IT】
2014年に「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジテレビ系)でドラマデビュー。主な出演作はドラマ「アイムホーム」(テレビ朝日系)、「リバース」(TBS系)、「明日の約束」(カンテレ・フジテレビ系)、「駐在刑事」(テレビ東京系)、映画「くちびるに歌を」、「相棒‐劇場版Ⅳ‐首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断」、「僕に、会いたかった」など。「下忍 赤い影」は10月4日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか公開。2020年1月公開予定の「太陽の家」に出演。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「下忍 赤い影」

詳しい情報は「下忍 赤い影」公式サイトへ
 

 

©2019「下忍」製作委員会
 
前日譚を描いた「下忍 青い影」が11月15日(金)に公開。
 
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